加温加湿への影響
加温加湿の制御方式でどれくらい違う?
人工呼吸器でのリークポート付き回路と呼気弁付き回路の比較を行った際に、結果の見方を変えることで加温加湿器の加温制御方法による加温加湿への影響も比較することが出来ました。
同一条件で加温加湿器のみを変更した場合、どのような変化が見られるでしょうか?
元実験:
人工呼吸器回路の種類による加温加湿への影響
リークポート付き回路と呼気弁付き回路の比較
条件
今回、人工呼吸器回路内の温度・湿度を測定する際の条件は以下です。
- 加温加湿器はMR810 Lv3、MR850 -00-を比較する。
- 加温加湿器出口、口元の2点で回路内の温度と相対湿度を測定する。
- 電源オンから30分間の余熱時間を設け、安定後に60分間の測定を行った。
- 測定された温度、相対湿度、Wagner式から絶対湿度の近似値を算出する。
- 測定後、温度湿度センサは送風乾燥する。
以上を各種回路で行い、MR810とMR850の制御方式による加温加湿への影響を比較しました。
各機種の加温の制御方式を簡単に説明すると以下となります。
- MR810:加温プレート部での温度測定・調節のみ
- MR850:加温加湿チャンバー出口と口元温度を測定、口元温度の状態で加温調節
実験回路上の限界として、比較のためにリークポート・呼気弁とテスト肺の間に口元側センサーを設置したため、テスト肺の呼気との混合気が測定されることになります。
対象の人工呼吸器、加温加湿器は以下です。
TrilogyEvo
MR810
MR850
対象の回路は以下です。
※全て成人用回路
HW:ヒーターワイヤ
EHW:エンベットヒーターワイヤ
その他使用機器、各種設定は以下です。
温湿度ロガー | HIOKI LR8514 |
---|---|
温湿度センサ | HIOKI Z2011 |
測定間隔 | 500ms |
室温 | 25℃ |
湿度 | 55% |
呼吸器設定 | 1Lテスト肺 回路設定: AcitivePAP / Passive モード: A/C-VC 一回換気量: 500mL PEEP: 5hPa 呼吸回数: 15回 分時換気量: 7.5L/min 吸気時間: 1.5秒 トリガー: オフ フローパターン: スクエア |
加温加湿器設定 | MR810: Lv3 MR850: -00- |
比較
各種回路での比較は以下です。
まとめ
全体的に口元での加温加湿量力はMR850の方が高い結果となっています。
特に、IS HWあり回路 は口元温度・湿度の増加が最も大きかったです。
逆に、EHW スリーブあり回路 は使用した回路の保温能力の影響を受けて、口元温度・湿度の増加は最も小さくなりました。
MR850 -00- を使用した場合の口元温度・湿度がある程度の近い値になったのは、口元温度を測定し加温を調節するフィードバック制御の影響が大きいと考えられます。
また、過去の呼気弁付き回路とリークポート付き回路の比較では、MR810では呼気弁付き回路の方が加温加湿能力が高く、MR850 -00- では差は小さいという結果もありました。
回路に使用するセンサケーブルやチューブの数は MR850+呼気弁付き回路 の構成が最も多くなります。
MR850 +リークポート付き回路 の構成で加湿能力が十分であるなら、回路の簡略化の選択肢として良いかもしれません。
参考データ MR850 -A- について
設定される頻度の高いMR850 -A- ですが、これは環境にあわせて目標温度の設定が変動するため、比較が難しく今回は除外しました。
以下は参考データとなります。
呼気弁付き回路、リークポート付き回路の両方で口元温度、口元絶対湿度は高い値となっていました。フィードバック制御と自動の目標温度設定が強く働いている結果です。