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呼気弁・リークポートによる
加温加湿への影響

リークポート付き回路と呼気弁付き回路の比較


在宅医療での人工呼吸器の回路にはリークポート付き回路と呼気弁付き回路が主に用いられています。
リークポート付きの回路を設定すると、回路に定常流が追加されるため、呼気弁付き回路を使用する場合に比べて呼吸器回路に流れる気体量が多くなります。
人工呼吸器回路の種類によって加温加湿の性能に影響はあるのでしょうか?

 

  1. 条件
  2. 結果
  3. まとめ

条件

今回、人工呼吸器回路内の温度・湿度を測定する際の条件は以下です。


MR810 呼気弁
EHW呼吸回路 スリーブあり 測定例

 

  1. 加温加湿器出口、口元の2点で回路内の温度と相対湿度を測定する。
  2. 電源オンから30分間の余熱時間を設け、安定後に60分間の測定を行った。
  3. 測定された温度、相対湿度、Wagner式から絶対湿度の近似値を算出し、平均値を比較する。
  4. 測定後、温度湿度センサは送風乾燥する。

以上を各種加温加湿器と回路で行い、リークポート付き回路と呼気弁付き回路での加温加湿への影響を比較しました。

実験回路上の限界として、比較のためにリークポート・呼気弁とテスト肺の間に口元側センサーを設置したため、テスト肺の呼気との混合気が測定されることになります。

 

対象の人工呼吸器、加温加湿器は以下です。


TrilogyEvo

 


MR810

 


MR850

 

対象の回路は以下です。


インターサージカル呼吸回路
HWあり 160cm

 


インターサージカル呼吸回路
HWなし ウォータートラップ+160cm

 


EHW呼吸回路
スリーブなし 160cm

 


EHW呼吸回路
スリーブあり 160cm

 

※全て成人用回路
HW:ヒーターワイヤ
EHW:エンベットヒーターワイヤ

 

その他使用機器、各種設定は以下です。

温湿度ロガー HIOKI LR8514
温湿度センサ HIOKI Z2011
測定間隔 500ms
室温 25℃
湿度 55%
呼吸器設定 1Lテスト肺
回路設定: AcitivePAP / Passive
モード: A/C-VC
一回換気量: 500mL
PEEP: 5hPa
呼吸回数: 15回
分時換気量: 7.5L/min
吸気時間: 1.5秒
トリガー: オフ
フローパターン: スクエア
加温加湿器設定 MR810: Lv3
MR850: -00-, -A-

結果

各種回路構成での比較は以下です。

 

 

MR810

インターサージカル HWなし

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 4.1g/m^3

 

MR810

インターサージカル HWあり

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 0.7g/m^3

 

MR810

EHW スリーブなし

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 2.2g/m^3

 

MR810

EHW スリーブあり

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 1.4g/m^3

 

 

 

MR850 -00-

インターサージカル HWあり

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 0g/m^3

 

MR850 -00-

EHW スリーブなし

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 0g/m^3

 

MR850 -00-

EHW スリーブあり

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 1.0g/m^3

 

 

 

MR850 -A-

インターサージカル HWあり

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 4.4g/m^3

 

MR850 -A-

EHW スリーブなし

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 0.5g/m^3

 

MR850 -A-

EHW スリーブあり

呼気弁-リークポート : 口元絶対湿度差 1.9g/m^3

 

まとめ

MR810使用時において、

リークポート付き回路は全体的に温度が低く、口元の温度・絶対湿度の比較では、呼気弁付き回路の方が加温加湿能力が高い傾向にあります。

 

MR850ではフィードバック制御(加温加湿器出口37℃、口元40℃を目標とした加温調節)が行われるため、差が小さくなっています。

 

MR850 -00-では3例中2例では、口元絶対湿度に差がみられない結果となりました。
MR850 -A- においては、加温加湿器出口と口元の目標温度が固定ではないため、比較が難しく参考データとなります。

 

※MR810はHWの有無によってチャンバー加熱の温度設定の挙動が変化しています。

※実験の制限として室温、テスト肺での測定なので、加湿を受ける側の温度は再現できていません。そのため、値の差がどの程度の影響を与えるかはわかりません。