在宅用吸引器の吸引力はどれくらい?
在宅用吸引器は各社より販売されていますが、数字での情報だけではどれが良いのかわかりにくいです。
今回、同条件で実際に使用してみて吸引能力の比較を行いました。
外観・スペック
今回の実験で使用した機種は以下です(順不同)
- Minic DC-Ⅱ
- 3WAY-750S(実験時は筐体変更前)
- MV-30B
- POWER SMILE S KS-710(実験時は内蔵バッテリー未発売)
- POWER SMILE KS-700
- bebecure
- Qtum QT-500
実験1 吸引量の比較
吸引圧力を最大に設定し、通常時とセーブモード(搭載機種のみ)、外部電源と内部電源(電池駆動)使用時の10秒間の吸引量を比較しました。
使用する吸引カテーテルは8Frです。
吸引カテーテルと吸引キャニスター間のチューブは1.0mとしました。
吸引対象は水とデキストリンとろみ調整剤にて3段階の粘度をつけたものです。
20℃の水100mL(100g)に対してデキストリンとろみ調整剤 1g/3g/5gを混合し、それぞれをかたさ1/3/5としました。
かたさ1の参考動画
かたさ3の参考動画
かたさ5の参考動画
比較結果
以下に10秒間での吸引量を表にしました。
値が大きいほど、吸引力が強いことを示します。
各吸引対象で最も値が大きいものを赤文字にしています。
外部AC電源 通常(g)
水 | かたさ1 | かたさ3 | かたさ5 | |
---|---|---|---|---|
Minic DC-Ⅱ | 48.1 | 39.0 | 18.8 | 3.5 |
3WAY-750S | 40.1 | 27.0 | 12.4 | 3.2 |
MV-30B | 45.4 | 35.4 | 19.8 | 5.7 |
KS-710 | 40.9 | 29.4 | 16.5 | 3.8 |
KS-700 | 40.1 | 27.3 | 16.3 | 4.3 |
bebecure | 39.3 | 29.5 | 18.5 | 4.6 |
Qtum QT-500 | 35.6 | 25.2 | 10.9 | 2.7 |
外部AC電源 セーブモード(g)
水 | かたさ1 | かたさ3 | かたさ5 | |
---|---|---|---|---|
Minic DC-Ⅱ | 42.4 | 31.4 | 10.6 | 1.6 |
3WAY-750S | 38.7 | 24.7 | 13.0 | 3.0 |
MV-30B | 41.7 | 30.1 | 15.7 | 4.6 |
KS-710 | – | – | – | – |
KS-700 | – | – | – | – |
bebecure | – | – | – | – |
Qtum QT-500 | – | – | – | – |
内部電源・電池駆動 通常(g)
水 | かたさ1 | かたさ3 | かたさ5 | |
---|---|---|---|---|
Minic DC-Ⅱ | 49.5 | 37.8 | 17.5 | 3.5 |
3WAY-750S | 39.6 | 30.1 | 17.5 | 3.5 |
MV-30B | 46.2 | 36.2 | 18.8 | 6.1 |
KS-710 | – | – | – | – |
KS-700 | 41.2 | 29.7 | 16.9 | 4.3 |
bebecure | 37.9 | 30.5 | 19.5 | 4.6 |
Qtum QT-500 | 34.8 | 23.4 | 6.3 | 2.0 |
内部電源・電池駆動 セーブモード(g)
水 | かたさ1 | かたさ3 | かたさ5 | |
---|---|---|---|---|
Minic DC-Ⅱ | 42.2 | 30.1 | 11.8 | 1.7 |
3WAY-750S | 36.9 | 27.6 | 12.9 | 3.4 |
MV-30B | 41.2 | 29.8 | 16.9 | 5.0 |
KS-710 | – | – | – | – |
KS-700 | – | – | – | – |
bebecure | – | – | – | – |
Qtum QT-500 | – | – | – | – |
実験2 かたい痰は吸引できるか?
実験1のように粘性のあるものを吸引する場合は単純な吸引力にのみ影響を受けます。
実際の吸引においては吸引対象と同時に空気を吸い込むので吸引流量も関係してきます。
そこで、かための痰を想定して吸引可能かどうかを比較しました。
使用した吸引カテーテルは8Frです。
吸引カテーテルと吸引キャニスター間のチューブは1.0mとしました。
吸引対象は20℃の水100mL(100g)に対してデキストリンとろみ調整剤7gを混合した高粘度物です。
5mLのシリンジ(内径14.1mm)内に高粘度物1mLを入れ、吸引圧力最大で吸引可能かを比較しました。
- かたさ7の参考動画
比較結果
時間をかければ全機種で吸引は可能でした。
吸引に必要な時間については手技による影響が大きいため参考までにしてください。
痰がかための傾向にある方は希望する機種のレンタルが可能でしたら、実際に吸引してみることを推奨します。
おまけ 吸引器の音色
せっかく吸引器が複数揃いましたので駆動時の音も比べてみました。
条件は以下です。
- 外部電源で駆動
- 吸引圧力は最大
- 負荷なし→閉塞
高音、低音によって響き方が違うので聞いてみてください。
比較動画
耳で聞いた音の大きさは、大きい順に以下のようでした。
Qtum Q-500 > KS-710 > 3WAY-750S > MV-30B > bebecure > KS-700 > Minic DC-Ⅱ
駆動する音の高音、低音で聞こえ方が異なるようです。
まとめ・気づき
実際に使ってみて感じた吸引力の強さは
Minic DC-Ⅱ ・ 3WAY-750S ・ MV-30B > KS-710 ・ KS-700 ・ bebecure > Qtum QT-500
の順番でしょうか。
持ち運びを考慮したコンパクトさでは
Qtum QT-500 ・ bebecure > KS-710 ・ KS-700 > 3WAY-750S ・ MV-30B > Minic DC-Ⅱ
の順番となりそうです。
全体を通して感じたことは、外部電源と内部電源の吸引力の差はあまりないということです(Qtum QT-500の電池駆動は特殊なため除外)。
以下はそれぞれの機種についての気づきです。
皆様の使用環境に合った吸引器選びの参考になればと思います。
Minic DC-Ⅱ
- 吸引力が強い。
- 吸引キャニスターに漏れる可能性のある個所が多い。
- 筐体が大きい・重い。
- 内蔵バッテリーはニッケル水素電池。
3WAY-750S
- 吸引力が強い。
- 電源コードがリール式で本体に内蔵できるため、AC持ち運ぶ付属品が少なくなる。
- 新型になって筐体は一回り小さくなったが大きめ。
- 内蔵バッテリーはニッケル水素電池。
MV-30B
- 吸引力が強い。
- 内蔵バッテリーがリチウムイオン電池であるため、ニッケル水素電池に比べて劣化が緩やかな傾向にある。
- 吸引キャニスターの蓋がスクリュータイプでかたいため、布などを用いないと手が痛くなる。
KS-710
- 吸引キャニスターが漏れにくい構造になっている。
- ベッドサイドに置きやすいサイズ。
- 内蔵バッテリーはニッケル水素電池。
KS-700
- ベッドサイドに置きやすいサイズ。
- 吸引キャニスターを密閉するための留め具が1か所のため、漏れる可能性が高そう。
- 内蔵バッテリーはニッケル水素電池。
bebecure
- コンパクトで使い勝手が良い。
- 内蔵バッテリーがリチウムイオン電池であるため、ニッケル水素電池に比べて劣化が緩やかな傾向にある。
- 吸引キャニスターの蓋を正しい位置で閉めないと、内部の部品が脱落する(吸引への影響は少ない)。
- 吸引キャニスターは細かく分解できるが、部品が小さい。
- 蓋へのチューブの収納は少々煩雑と感じる。
Qtum QT-500
- とても小さい。
- 電池駆動が可能であり災害時の電源確保がしやすい。
- 吸引力は弱め。
- 電池駆動時の電池の消耗は早い。
- かための痰の方は吸引力が十分か試用が必要。