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人工呼吸器

消費電力量

稼働中の消費電力量はどれくらい?


移動時や停電時等に、
在宅用人工呼吸器を家庭用電源以外で駆動する場合に気になるのが消費電力量(W)です。
実際の消費電力量はどれほどなのでしょうか?

 

そこで、在宅用人工呼吸器、加温加湿器の稼働時消費電力量を調べました。
※過去の実験をまとめたものです。

 

  1. 仕様書記載の消費電力と実際の消費電力量
  2. ポータブル電源で在宅用人工呼吸を稼働させるとして・・・
  3. 実験条件
  4. 実験1 在宅用人工呼吸器の稼働時消費電力量
  5. 実験2 加温加湿器の稼働時消費電力量
  6. 参考値 酸素濃縮器の稼働時消費電力量
  7. まとめ

仕様書記載の消費電力量と実際の消費電力量

機器の仕様書に記載されている消費電力量は、その機器が使用する最大の値という認識で問題ありません(詳しくは異なります)。
そのため実際の稼働時の消費電力量は異なる場合があります。

 

例えば、仕様書記載の消費電力量が300VA(W)の機器Aがあるとします。

この機器Aを電気容量300Whのポータブル電源で動かすとどれくらいの時間動かせるでしょうか?

 

計算上は
300Wh/300W=1時間 ですが、
実際には約10時間稼働するということが起こりえます。
この機器Aは状態によって消費電力が変わり、実際に稼働している時の消費電力量は30Wであったということです。

 

注意点として、この機器Aは安定稼働時は30Wの消費電力量であったとしても、動作をする上で瞬間的に仕様書記載の300VA(W)の消費電力量となる可能性があるということです。
ポータブル電源側に300Wを出力する能力がなければ、機器Aが動作しないということが起こりえます。

 

ポータブル電源で在宅用人工呼吸を稼働させるとして・・・

昨今、AC100Vの出力が可能なポータブル電源が手に入りやすくなり、在宅用人工呼吸器の移動時や非常時の電源として選択肢になりました。

 

では、移動にかかる時間がわかるとして、
最低限どれくらいの電気容量のポータブル電源が必要なのでしょうか?
既に持っているポータブル電源ではどれくらい稼働させることができるでしょうか?

 

これらを予測するには在宅用人工呼吸器や付随する機器の稼働中の消費電力量を知る必要があります。

実験条件

今回、在宅用人工呼吸器の稼働中の消費電力量の目安として以下の条件、機種で測定を行いました。

 

  1. 在宅用人工呼吸器は満充電の状態で稼働させ、その際の電流を測定する。
  2. 加温加湿器は人工呼吸器に接続し換気させ、その際の電流を測定する。
  3. 測定で得られた電流の値から、稼働時の消費電力量(W)を算出する(測定電流値x100)。

測定対象機種は以下です。

在宅用人工呼吸器


ASTRAL150

PB560

Trilogy 100plus

TrilogyEvo

Vivo60

 

加温加湿器


MR810

MR850

PWH7000PLUS

inspired VHB100

 

使用機器、各種設定は以下です。

測定器 KYORITSU KEW5010
KYORITSU KEW8146
測定時間 各機種1時間
測定方式 真の実効値演算 1分間の平均値
サンプリング間隔 1.65ms
測定時の室温 20℃
使用呼吸器回路 成人用ヒーターワイヤなしパッシブ回路
1Lテスト肺
※PB560のみ成人用ヒーターワイヤなし呼気弁回路
測定時の換気量 約5L/min
呼吸器設定 モード PCV(トリガーなし)
PIP 20cmH20
PEEP 5cmH20
換気回数 15回/分
吸気時間 1.0s
ライズタイム 各機種最小

実験1 在宅用人工呼吸器の稼働時消費電力量

各機種の稼働時消費電力量を1時間平均した結果は以下です。

機種名 仕様書記載
消費電力量
稼働時
消費電力量

ASTRAL150
210W 24W

PB560
180W 20W

Trilogy 100plus
210W 15W

TrilogyEvo
170W 18W

Vivo60
300W 27W

実験2 加温加湿器の稼働時消費電力量

各機種の稼働時消費電力量を1時間平均した結果は以下です。

機種名
加温設定
仕様書記載
消費電力量
稼働時
消費電力量

MR810
HWなし
Lv1
150W 42W
MR810
HWなし
Lv2
64W
MR810
HWなし
Lv3
78W

MR810
HWあり
Lv1
180W 54W
MR810
HWあり
Lv2
78W
MR810
HWあり
Lv3
77W

MR850
-A-
220W 100W
MR850
-0.0-
109W
MR850
-1.0-
113W

PWH7000 PLUS
出口37℃
口元40℃
250W 89W

inspired VHB100
Lv1
100W 16W
VHB100
Lv9
57W
※HW=ヒーターワイヤ

参考値 酸素濃縮器の稼働時消費電力量

参考までに以下2機種の酸素濃縮器の稼働時消費電力量の測定値です。

機種名 仕様書記載
消費電力量
流量 稼働時
消費電力量

クリーンサンソ
FH-100/5L
340W 0.25L/min 1.18W
0.5L/min 1.22W
1.0L/min 1.46W
3.0L/min 2.12W
5.0L/min 2.67W

オキシウェル-5A
410W 0.25L/min 1.3W
0.5L/min 1.23W
1.0L/min 1.24W
3.0L/min 1.86W
5.0L/min 3.06W

まとめ

人工呼吸の消費電力量は設定によって異なると思いますが、今回の設定では仕様書記載の消費電力量より少なく、ある程度一定の値となっています。
また、内蔵バッテリーの充電が行われると消費電力量は大きくなります。

 

実験時は室温20℃でしたが、加温加湿器は温度をコントロールする関係上、室温に影響を受けると考えられます。季節によって異なる結果になるでしょう。
機種により加温方法も異なるようで、一定の消費電力量になるもの、小刻みにオンオフを繰り返しているものがあり、興味深い結果となりました。

 

稼働時の消費電力を知ることで、人工呼吸器を伴った移動時や停電時の具体的な対応が立てやすくなります。
稼働時の消費電力は市販の簡易チェッカーでも調べることができます。

ご使用になっている機器の稼働時の消費電力量を調べてみてください。

 


ポータブル電源で
人工呼吸器はどれくらい動く?

ポータブル電源での人工呼吸器稼働時間